炭坑記録画の数々
ヤマの暮らし
ウサギ坑夫
昭和40年3月
昔のヤマ人、ウサギ坑夫。ウサギは前足が短く、登り坂は早く駆け上がって上手だが、下り坂は遅い。よって、人より遅れて入坑し、昇坑は一番先にする坑夫につけたあだ名。
どんなベテランでも、入坑時間が人の半分くらいでは仕事にならぬ。スカブラ(怠け者)で、ノソン(サボり)も時々する(入坑して作業せずに昇坑する)。三池坑(三池炭田)は、ノソンのことをヒボテと言うらしい。
このスカブラ坑夫は、弁当だけは食べてあがる。ガガまたはクラガイで竹の身を楕円形、底は杉板上下で、約四合(六百グラム)の飯は詰める。菜入は小形がある。茶はブリキ製で、一リットル以上入る。(水筒は)ガメと称す。
当時、明治三十二年頃、白米一升十銭、沢庵(コンコン)一本一銭、さつまいも一斤(六〇〇グラム)一銭五厘。
うさぎは、飼いうさぎは耳が長く、野ウサギは短い。
坑内は弁当を食べる場所がない。マキタテかカブダシ場かカネカタか。何れも狭い。絵は切羽のカイロである。大根の漬物は長手に切って、それをスリッパと言う。(レールの枕木)
ヤマによっては、カネカタに落ちたボタがうっ積して、よけ場もない。
※クラガイ 竹の中身で作った曲物で、坑夫の弁当容器に使用した。
※マキタテ 捲立。捲卸から片盤曲片への入口で、空函を実函に連結しかえて捲き上げる場所。
※カブダシ場 坑内に石炭を一時溜めておく場所。
※カネカタ 曲片。捲卸から片盤の方向に、一定の間隔をおいて掘進する主要坑道。
※カイロ 街路、街道。石炭を人力で運ぶ運搬坑道。
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