炭坑記録画の数々
排水、通気

坑内坑外のポンプ
昭和39~42年頃

 明治からの坑内、坑外のポンプ。大ヤマで自家発電機のあるところは、明治後期に電気ポンプを坑内に据えたが、その他のヤマは大正七、八年頃から(電気ポンプ)を据えはじめた。それ以前にもあったが、停電が多いから蒸気ポンプと並べて据えていた。
(蒸気)
1上:スペシャル・ポンプ。スライドバルブの調子が悪く、時々つき止まりする。
2:バーチカル(垂直用)ポンプの竪エンジン。これは坑外ボイラーの補給用に、S坑(山内坑)に据えてあった。フライホール(弾み車)付ブランジャー(棒ピストン)式で、ドンキとも言う。この式は、横置きもある(ホリゾンタール)。
3下:ウォーシントン・ポンプ。自力でスライドバルブの切り替えをするから、強力NO1である。蒸気だけでなく、風(エアー、圧搾空気)でも動く。ダブルロッド(棒状の部品であるロッドが上下に2本付く)。日鉄坑では卸さがりに使用。
4中:四枚戸バルブは10インチのポンプ(口径が約25.4㌢のポンプ)まで使用。スペシャル・ポンプ、エバンス・ポンプも同じだが、(口径が)12インチ(約30㌢)からエバンス・ポンプはゴムのバルブになる。ケーシング(ピストンが動く管)内のバルブも大改善。ローランも皮パッキン。
(電気)
1:大正の初めより中期頃、卸しさがり用に使用したが、歯車の音ばかり大きくして、その割りに能率があがらず、中期の後半から姿を消した。トラックまたはスリースロー・ポンプとも言っていた。三ヶクランクのブランジャー式。
2:卸し下がり用のレイトン(デートン)ポンプ。現今でも小ヤマで使用。昭和初期よりダブルロッド。
3:タービン・ポンプ。外形の模様は種々雑多あるが、馬力はモーターを使用。タービンはライナー(回転)数によって定まる。日鉄(炭鉱)は、アンペア計(電力計)の外に、メートル計、圧力計をつけていたが、小ヤマのポンプには皆つけていない。
 大手ヤマは卸しさがりに電気ポンプを使用しない。(蒸気の)ウォーシントン・ポンプをエアー(空気)で動かす。削岩機やオーガもエアーを使用する。


※卸さがり  卸方向(炭層の傾斜に沿って下る方向)へ掘進すること。
※ローラン  パッキングをつくる部品の一種。
※クランク  往復運動を回転運動に、また回転運動を往復運動に変換する仕組。
※オーガ   オーガー。小形原動機付きのらせん状の錐で、穿孔時に使用する。

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