炭坑記録画の数々
ヤマの暮らし

入浴
昭和39~42年頃

 昔のヤマ人の入浴、フロ。男女混浴。坑内よりの揚水で、蒸気ポンプのシリンダー油も混じっており、カナケも多いので、ネチャネチャして垢はおちない。
まっ黒に汚れた先山は、荒洗いもせず、尻も濡らさず、風呂に飛び込む人もおった。また、浴槽内で石鹸も使い放しだから、汚いのはアイガメのようになる。
 石鹸は一個三銭。後に五銭になった。石灰とソーダの固まりで、目に入ったら痛んで赤くなっていた。タオルも和手拭いで、黒ずんでいた。鼻の孔を掃除するので、タオルは黒斑がつき、絣模様になっていた。手拭も一筋三銭、上等で五銭。
 浴槽の底と地面は同じであるから、縁が高く、子供は入りにくかった。男女混浴は、小ヤマで昭和時代まであった。中には同じ浴槽を板で仕切り、入口だけ男女二戸にしている風呂もあった。
 冬になると、風呂に入る人は熱いから水入れと言う。入っている人は、温いから沸かせと言う。自己の主張に力をいれていた。



※カナケ  金気。金属の臭いがあること。
※先山   石炭採掘の熟練者、主に男性。
※アイガメ 藍瓶。染料をいれた容器。

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